アルザスとコート・デュ・ローヌの多様性を知る|フランスワインの現在地

フランスを代表するワイン産地であるアルザスとコート・デュ・ローヌ。その魅力を学ぶセミナーに参加しました。

セミナーは二部構成で行われ、前半ではアルザスワイン、特にクレマン・ダルザスの魅力と多様性について、後半ではコート・デュ・ローヌのブドウ品種やアサンブラージュ(ブレンド)の文化、さらに気候変動への対応について紹介されました。

産地としての個性は大きく異なる両者ですが、今回のセミナーを通じて印象に残ったのは「多様性」という共通のキーワードです。土壌やブドウ品種、ワインスタイルの幅広さに加え、現代の消費者ニーズや環境変化に柔軟に対応する姿勢について学ぶ機会となりました。

アルザスワイン:アルザスワイン生産地の公式サイト

ホームページ |コート・デュ・ローヌ公式ウェブサイト

目次

アルザスが持つ多様性とクレマン・ダルザスの可能性

アルザスはフランス北東部に位置し、ドイツ文化の影響も受けながら独自のアイデンティティを築いてきた産地です。

ブドウ畑は約15,000haとフランス全体の約3%に過ぎませんが、その87%が白ワインです。

近年は世界的に白ワインやエレガントな赤ワインへの需要が高まっていますが、アルザスはシンプルでフレッシュなスタイルから複雑で熟成ポテンシャルの高いスタイルまで、幅広い白ワインを生み出しています。

さらに印象的だったのが環境への取り組みです。アルザスではブドウ畑の35%が有機認証を取得しており、フランス平均を大きく上回っています。

また、多様な土壌を持ち、ブドウ品種の個性を最大限引き出していることもアルザスの魅力として紹介されました。

クレマン・ダルザスの進化

今回のテーマのひとつがクレマン・ダルザスでした。

1976年のアペラシオン制定以降、生産量は年間4,400万本へと成長し、現在ではフランスでシャンパーニュに次いで多く飲まれるAOC発泡性ワインとなっています。

日本はアジア最大の市場でもあり、シャンパーニュ価格の上昇を背景に、今後さらに注目されるカテゴリーになりそうです。

テイスティングでは、スタンダードなスタイルから、4~5年熟成、さらには9年熟成のヴィンテージ・クレマンまで幅広く試飲。

特に印象的だったのは、クレマン・ダルザスが軽やかなものから、長期熟成によって複雑さや深みがあるスタイルまで多様なことです。

テイスティング|クレマン・ダルザス

テイスティングした
クレマン・ダルザス6種類
  1. Cave de Turckheim|AOC Crémant d’Alsace Brut Mayerling
    ピノ・ブランとオーセロワの伝統的なブレンド。法定期間の倍以上の24ヶ月熟成。リンゴや洋梨のフレッシュな果実香、細かく持続性のある泡が特徴。エレガントで軽やかな口当たりは、アペリティフに最適。
  2. Domaine Schoenheitz|AOC Crémant d’Alsace Extra Brut|Mémoire de Granit
    花崗岩土壌の古樹(樹齢26年以上)から造られる。オーセロワ85%にピノ・ノワール15%をブレンドし、4~5年の長期熟成。豊かなアロマと複雑性を持ち、食事にも合わせられるしっかりとした骨格を持つ。
  3. Domaine Albert Hertz|AOC Crémant d’Alsace Brut Nature 2022
    シャルドネ60%とピノ・ブラン40%のブレンド。30ヶ月の澱熟成とドサージュ・ゼロ(補糖なし)が特徴。シャルドネ由来のブリオッシュやバターの香りに、エレガンスとフレッシュさが際立ち、長い余韻を持つ。
  4. Domaine Vincent Fleith|AOC Crémant d’Alsace Brut
    ビオディナミ農法。ピノ・ブランとオーセロワを主体に、リースリング(フレッシュさ)、ピノ・ノワール(ボディ)、ピノ・グリ(スモーキーな複雑性)など多様な品種をブレンド。複数のヴィンテージ(2000, 2021, 2022)を組み合わせ、複雑で熟成を感じさせる味わい。
  5. Domaine Muré|AOC Crémant d’Alsace Extra Brut Grand Millésime 2017
    9年という長期熟成を経たヴィンテージ・クレマン。石灰質土壌のシャルドネとリースリングを50%ずつブレンドし、澱の上で6年間熟成。濃い黄金色で、深みとリースリング由来のストレートな酸が見事に調和している。
  6. Maison Dopff au Moulin|AOC Crémant d’Alsace Brut Blanc de Noirs 2022
    クレマンのパイオニア的存在のメゾン。ピノ・ノワール100%で造られ、直接圧搾ながらもわずかにピンクがかった色合いを持つ。赤い果実の表現豊かな香りに、力強さと繊細な渋みが共存する、食事向きのワイン。サービス温度は8~9℃とやや高めでも楽しめる。


    これらのテイスティングを通じて、クレマン・ダルザスが、多様な品種の組み合わせ、長期熟成、テロワールの表現によって、食事全体を通して楽しめる複雑で高品質なワインであることが示されました。

コート・デュ・ローヌを支えるアサンブラージュ文化

後半はコート・デュ・ローヌに焦点が当てられました。

ローヌはフランスで2番目に大きなAOC産地であり、2000年にわたるワイン造りの歴史を持っています。

この産地最大の特徴は、アサンブラージュ(ブレンド)の文化です。

グルナッシュ、シラー、ムールヴェードルを中心に、現在では23品種ものブドウが認可されており、それらを組み合わせることで複雑なスタイルが生み出されています。

単一品種ではなく、多様な品種を調和させることで完成度を高めるという考え方は、ローヌらしい魅力のひとつです。

気候変動への対応

二部を通して12種類のワインをテイスティング

コート・デュ・ローヌでは多様なブドウ品種を活用することで高温化への適応を図っています。

さらにローヌでは「VIFA」と呼ばれる実験的な制度も導入され、新たな品種の試験栽培や利用が進められています。

気候変動という課題に対して、産地の個性を守りながら未来へ向けた挑戦を続けている姿が印象的でした。

テイスティング|コート・デュ・ローヌ

テイスティングした
コート・デュ・ローヌのワイン6種類

コート・デュ・ローヌの多様性を感じられる6種類のワインのテイスティングが行われ、アサンブラージュ(ブレンド)がもたらすスタイルの豊かさが示されました。この地域は赤ワインが生産の80~97%を占めますが、テイスティングでは白、ロゼ、そして個性的な赤ワインが紹介されました。

  1. Domaine Saint Vincent|AOC Côtes du Rhône Village, Blanc 2024
    ヴィオニエ60%を主体に、グルナッシュ・ブラン、ブールブーラン、マルサンヌをブレンド。ヴィオニエの豊かさに、ブールブーランがもたらす酸とフレッシュさがバランスを与えている。
  2. Domaine Roche Buissière |AOC Côtes du Rhône Rosé 2022
    サンソーを主体としたロゼ。比較的冷涼な高地の畑で造られ、ダイレクトプレス製法を採用。サンソー由来のフローラルでスパイシーな香りが特徴。
  3. Domaine Gramiller|AOC Côtes du Rhône Pruine Rouge 2024
    グルナッシュ、シラーに加え、カリニャン、サンソー、そして希少なクノワーズ(5%)をブレンド。多様な品種が調和し、特に晩熟なクノワーズがフレッシュさを加えている。赤ワインは提供前に20分ほど冷やすことで、より飲みやすさが増すと推奨された。
  4. Domaine Gramiller|AOC Côtes du Rhône Pruine Rouge 2024
    シラーと並び、樹齢60年の古木から採れるカリニャンを30%使用。品種ごとに醸造し、収穫時期の差を活かしている。カリニャンがスパイシーさ、黒系果実の風味、しっかりとした骨格を与えている。
  5. Famille Perrin|AOC Cairanne, Peyre Blanche, Rouge 2023
    クリュの一つであるケランヌのオーガニックワイン。グルナッシュとシラーのみのブレンドだが、クリュならではのテロワールがワインに深み、力強さ、複雑性を与えている。ラズベリーのような果実味とシラー由来の胡椒のニュアンスが特徴。
  6. Domaine les Goubert|AOC Gigondas, Rouge 2021
    クリュの一つであるジゴンダスの5年熟成ワイン。このアペラシオンでは近年白ワインの生産も始まったが、この赤ワインでは、ブレンドされたクレレット種がフレッシュさと果実味を保つ役割を果たしている。清澄・ろ過を行わない製法で、力強さの中にダイナミズムを感じさせるスタイル。

    これらのテイスティングは、コート・デュ・ローヌが単一のスタイルに留まらず、多様なブドウ品種と卓越したブレンド技術によって、フレッシュな白やロゼから、複雑で熟成ポテンシャルの高い赤ワインまで、幅広い魅力を持つ産地であることを示しました。

まとめ

セミナー終了後はテラスでさまざまなワインを楽しみながら
参加者の皆さまと交流する機会もありました

アルザスでは土壌や品種、クレマンのスタイルの多様性を、コート・デュ・ローヌではブドウ品種とアサンブラージュによる多様性を学ぶことができました。そして両産地に共通していたのは、伝統を守りながらも現代の消費者ニーズや気候変動といった課題に柔軟に向き合っていることです。

ワインは歴史や文化を受け継ぐ一方で、時代とともに進化し続ける存在でもあります。今回のセミナーは、フランスワインの奥深さと未来への可能性を改めて感じる機会となりました。

セミナー後は、ワイン業界の方々やワイン愛好家の皆さまと交流する機会もありました。会場の八芳園は新緑が美しく、爽やかな気候の中でワインを楽しむことができました。

この記事を書いた人

Wine Flight編集部です。この度は当サイトをご覧いただきありがとうございます。Wine Flight編集部では、CAライターと共にCA視点のワイン情報をお届けしてまいります。どうぞお楽しみに!

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