千葉県御宿町で300年以上にわたり酒造りを続ける岩瀬酒造。
その代表銘柄「岩の井」とフレンチのフルコースを楽しむメーカーズディナーが開催されました。
今回の会を企画したのは、Wine Flightにも記事を寄稿してくださっているDipWSETの宮崎まりさん。
料理を手がけたのは、沖縄県石垣島生まれで、出張料理人としても人気を集める川原壮太シェフです。コースには、石垣島の美崎牛や沖縄の黒糖など、シェフのルーツを感じさせる食材も登場しました。
千葉・御宿の「超硬水」が育む日本酒と、川原壮太シェフによるフレンチ。メーカーズディナーの様子をレポートします。

1723年創業、千葉・御宿の岩瀬酒造
| 商品名 | i240 総の舞 | i240 五百万石 | i240 五百万石 | i240 山廃・山田錦 | 山廃純米 | 秘蔵古酒20年 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 酒米 | 総の舞(ふさのまい) | 五百万石 | 五百万石 | 山田錦 | 五百万石 | ― |
| 精米歩合 | 50% | 50% | 50% | 55% | 70% | ― |
| 酵母 | 1801+901 | 1801+901 | 1401 | 601 | 701 | ― |
| アルコール度数 | 16% | 16% | 16% | 17% | 15% | 15% |
| 日本酒度 | +2 | +3 | +5 | +4 | +4 | ― |
| 酸度 | 2.4 | 2.4 | 2.4 | 2.5 | 3.1 | ― |
| シェフが選ぶ美酒アワード | ― | ― | フレンチ部門 ★★★/イタリアン部門 ★★/中華部門 ★ | 中華部門 ★ | ― | 和食部門 ★★/イタリアン部門 ★★/フレンチ部門 ★ |
| 720ml価格(税込) | ¥2,310 | ¥2,640 | ¥1,980 | ¥2,310 | ¥1,430 | ¥11,000 |
| 1800ml価格(税込) | ¥3,850 | ¥3,960 | ¥3,520 | ¥3,850 | ¥2,860 | ― |
| 商品説明 | 総の舞のやわらかな旨味、1801酵母の爽やかな香り。 そこに岩の井の超硬水が加わることで、ただ優しいだけではない、力強い骨格と鮮やかなキレを備えた酒に仕上がりました。 口当たりはなめらかで、旨味はしっかり。 後味は驚くほどすっきり。 華やかさと飲みやすさ、そして食中酒としての完成度を追求した、岩の井ならではの「総の舞」です。 | 酒米「五百万石」の軽快でキレのある味わいに、1801酵母がもたらす爽やかで華やかな吟醸香を融合。 岩の井が誇る硬度240の超硬水が発酵を力強く支え、五百万石の持つ透明感のある酒質に、骨太な旨味と力強いミネラル感を与えました。 口に含むと豊かな旨味が広がり、後半には特徴的な酸味とほのかな苦味が重なり合いながら、鮮やかにキレていく。 華やかさと力強さを兼ね備えた、岩の井ならではの1801酵母使用したi240です。 | 岩の井i240の原点で、超硬水の個性が最も分かる一本 。酒米「五百万石」と1401酵母を使用し、五百万石ならではの透明感のある旨味と軽快なキレを引き出しました。 さらに、岩の井が誇る硬度240の超硬水が発酵を力強く支え、爽やかな飲み口の中にも、しっかりとした旨味と力強い骨格を生み出しています。 口に含むと米の旨味が広がり、特徴的な酸味とほのかな苦味が味わいに奥行きを与えながら、後味は鮮やかにキレていく。 | 「i240」シリーズ唯一の山廃仕込。 味わいは山廃らしく凛とした酸と、山田錦らしい奥行きのある味わいとなっています。 | 伝統醸造技法の山廃酛により醸した、お米の旨味のある辛口の純米酒です。 お燗すると膨らみのあるキレの良いお酒です。 | 二十年以上の歳月が磨き上げた輝きのある黄金色が美しく映えます。琥珀のように揺らめく色合いと、熟成古酒ならではの芳醇で奥深い香りは、口に運ぶ前から特別な時間を演出します。 「大吟醸」と「純米」を絶妙にブレンドすることで、まろやかな甘味とふくよかな旨味を実現。なめらかな口当たりから広がる奥深い味わいと、長く続く上品な余韻が、熟成酒の魅力を存分に感じさせます。 |
岩瀬酒造は1723年創業。千葉県夷隅郡御宿町で、「岩の井」を醸す酒蔵です。
岩瀬酒造の酒造りを語るうえで欠かせないのが、仕込み水。
蔵からほど近い御宿周辺には、房総半島の貝殻層を通ってきたミネラル豊富な地下水が流れています。その硬度は約240。日本酒の仕込み水として知られる灘の「宮水」が硬度約120とされることを考えても、国内屈指の「超硬水」です。
この水から生まれるしっかりとした酸味と、ミネラル由来のほろ苦さ、そして力強い骨格が「岩の井」の大きな個性。
岩瀬酒造では、香りや甘さを過度に前面に出すのではなく、飲み飽きせず、幅広い料理と楽しめる食中酒を目指しています。
【関連記事:岩瀬酒造の日本酒をトップテイスターたちがブラインドテイスティング|専門家のリアルな評価とは | Sake Review Session 01 – Wine Flight ワインフライト】

フレンチとの相性が評価された「i240 五百万石(1401酵母)」

「岩の井 i240 五百万石」の240は、岩瀬酒造の仕込み水の硬度に由来します。酒米には五百万石を使用。透明感のある旨味と軽快なキレに、超硬水由来の酸味やほろ苦さ、しっかりとした骨格が重なります。
そして「岩の井 i240 五百万石」は、「シェフが選ぶ美酒アワード2026」のフレンチ部門において、最高評価となる三ツ星を受賞。
料理のジャンルを問わず、その魅力を発揮し、フレンチとの相性も高く評価された日本酒なのです。
今回のメーカーズディナーでは、まさにその魅力を実際の料理とともに体験していきます。
千葉が誇る酒造好適米「総の舞」で乾杯!

タコ、マグロ、グレープフルーツ、オレンジ、モッツァレラ、オリーブ
レモンとトマトのソース
最初に登場したのは、千葉生まれの酒造好適米「総の舞」を使用した日本酒。
硬水仕込みならではの酸と旨味があり、華やかさを感じながらも、引き締まった味わいが印象的です。
合わせたのは、タコやマグロなどの魚介にグレープフルーツやオレンジ、モッツァレラを組み合わせたカルパッチョ仕立て。
レモンとトマトをベースにしたソースの酸味、柑橘の皮を思わせるほろ苦さが、日本酒の持つ酸や苦味と重なります。
同じ「五百万石」を酵母違いで飲み比べ

桃と白ワイン、柑橘の皮、蜂蜜のソース
続いては、五百万石を使用し、精米歩合も同じ50%ながら、異なる酵母で醸した2種類を比較します。
一方は1801酵母、もう一方は1401酵母。
酒米や精米歩合という条件を揃えることで、酵母によって香りや味わいがどのように変化するのかを比較できる興味深い構成です。
合わせた料理のひとつが、ホタテとカブの前菜。
桃をベースに白ワインを使ったソースに、柑橘の皮の苦味、蜂蜜の甘味と華やかさを重ねています。
酒だけを比較するのではなく、料理と合わせることで、それぞれの香りや酸、旨味の違いがより鮮明に感じられました。
特に印象的だった「i240 五百万石(1401酵母)」と白身魚

しめじ、バター、塩麹、青のりのソース
この日、特に印象に残ったペアリングのひとつが、「i240 五百万石(1401酵母)」と魚料理でした。
オリーブオイルと塩で焼き上げた魚に、しめじ、バター、塩麹、青のりを使ったソース。
バターのコクに、塩麹の旨味、青のりの磯の風味が重なります。
ここで存在感を発揮したのが、「i240」の持つ酸味とほろ苦さでした。
庄野さんによると、このお酒は酸味と苦味があり、「岩の井らしさ」が最も表れている一本とのこと。和食はもちろん、オリーブオイルやニンニクを使った料理、バターを使ったリッチな味わいの料理にも負けない力強さがあり、こうした料理と合わせるのも面白いと語られました。
「シェフが選ぶ美酒アワード2026」でフレンチ部門の三ツ星を獲得したことにも納得できる組み合わせでした。
石垣島の美崎牛と「山廃」

醤油とワインベースのソース

わさび醤油ソース、マッシュポテト添え
後半には、川原シェフの故郷・石垣島の食材が登場します。
メインとなったのは、石垣島の「美崎牛」。
醤油とワインを使って煮込んだ美崎牛のリゾットと、ローストビーフにわさび醤油をベースにしたソース、マッシュポテトを添えた料理が提供されました。
合わせた日本酒は「山廃」。
今回は冷酒だけでなく燗でも味わいます。
温度を上げることで旨味がふくらみ、出汁を思わせるニュアンスがより感じられるように。
美崎牛の旨味や醤油の風味と山廃の持つ複雑な旨味が重なり、日本酒は温度によって料理との関係まで変わるという面白さを改めて感じました。
WF編集部「山廃純米辛口」は、昭和から続く岩の井の定番酒。「岩の井といえば山廃」と言われるほど親しまれてきた一本です。現在は五百万石を使用し、精米歩合70%で醸造。かつての飯米仕込みの味わいと比べ、よりキレの良さを感じられるスタイルになっているそう。
「秘蔵古酒20年」と黒糖ティラミス




そして、この日記憶に残った組み合わせのひとつが、最後のデザートでした。
岩瀬酒造の「秘蔵古酒20年」と、沖縄の黒糖を使った「王のティラミス」です。
岩瀬酒造は古くから熟成酒造りに取り組んできた蔵でもあります。
「秘蔵古酒20年」は、20年以上の歳月を重ねた長期熟成古酒。大吟醸と純米をブレンドし、長期熟成による深い色調と芳醇な香り、まろやかな甘味と旨味を備えています。
「秘蔵古酒20年」も「シェフが選ぶ美酒アワード2026」で、和食部門とイタリアン部門の二ツ星、フレンチ部門の一ツ星を獲得しています。
そんな熟成古酒に合わせたのが、黒糖とクリームチーズを使ったティラミス。
黒糖のコクとクリームチーズの濃厚な味わいに、熟成古酒の複雑な香りが重なります。
熟成によって生まれた甘やかさや香ばしさには、どこかポートやマデイラのような酒精強化ワインにも通じるものがあり、ティラミスとの組み合わせは想像以上の好相性。
個人的にも、今回特に好きだったペアリングです。



蔵元の庄野さんによると、「秘蔵古酒20年」はバルサミコ酢を使ったフォアグラ料理とも相性が良かったそう。
岩の井とフレンチ、新たな魅力を発見


今回のイベントは、千葉県御宿町の「岩の井酒造」が醸す日本酒と、人気出張料理人・川原シェフによるフレンチのフルコースを楽しむ、贅沢なひとときとなりました。
硬水仕込みならではのキリッとした酸味や苦味はフレンチとも相性が良く、料理に合わせて冷酒から燗酒まで、温度によって変化する日本酒を楽しめたのも印象的でした。
そして、味わいだけでなく興味深かったのが「岩の井」の歴史です。
庄野さんによると、日本酒好きとして知られた池田勇人元首相にも「岩の井」にまつわるエピソードが残っているそう。ある会合で「岩の井を出せ」と指示したことをきっかけに、その後も会合で振る舞われるようになったといいます。
また、東京サミットの晩餐会やJAL国際線ファーストクラスで採用された実績もあるとのこと。さらに、蔵には昭和の時代から大切に守られてきた古酒も残されています。
料理とのペアリングを楽しみながら、こうした蔵の歴史や一つひとつのお酒にまつわる物語にも触れられた今回のメーカーズディナー。「岩の井」の新たな魅力を知る一夜となりました。









