純米吟醸酒をはじめとする特定名称酒への人気が高まる一方で、低アルコール日本酒やスパークリング日本酒といった新しいスタイルも登場。また、生酛や木桶仕込みといった伝統的な製法も改めて注目されています。さらに、海外市場の拡大やさまざまな料理とのペアリングなど、日本酒を取り巻く環境も変化を続けています。
そんな日本酒の”今”を知ることができる、日本酒造組合中央会主催のメディア向けイベントに参加しました。
イベントでは、新たに就任した日本の酒情報館・芦川達也館長による施設紹介をはじめ、日本酒フェアの振り返り、日本酒造組合中央会の宇都宮仁理事による日本酒業界の現状や課題、海外輸出の動向、さらにスパイス料理と日本酒のペアリング体験まで、多岐にわたる内容が紹介されました。
「日本の酒情報館」が目指す新しい日本酒の発信拠点
まず紹介されたのは、日本の酒情報館の新館長に就任した芦川達也氏。
酒類卸売や海外事業など長年酒類業界に携わってきた経験を活かし、生産者と消費者をつなぐ情報発信をさらに強化していきたいと話されました。
今年、開館10周年を迎える日本の酒情報館では、
- 約100種類の日本酒・本格焼酎・泡盛等の試飲・販売
- 英語対応のセミナー
- インバウンド向け情報発信
- 日本文化と日本酒を組み合わせたイベント
なども開催されており、日本酒を気軽に学べる施設として進化を続けています。
日本酒フェアで見えた「若い世代」の変化

今年開催された日本酒フェアでは、39歳以下を対象とした割引チケット「アンダー39チケット」が初めて導入されました。
その結果、来場者の半数以上を若年層が占めるなど、新たな日本酒ファンの獲得につながる大きな成果があったそうです。
特に人気を集めたのは、炭酸割りや低アルコール日本酒など、新しい飲み方を提案する「ディスカバリーバー」。従来の日本酒のイメージにとらわれない自由な楽しみ方が提案され、若い世代にも好評だったといいます。
日本酒というと伝統的なお酒という印象がありますが、飲み方や楽しみ方も時代に合わせて進化しており、新たなファン層を広げる取り組みが積極的に行われていることが印象的でした。
日本酒は「純米吟醸酒の時代」へ
日本酒造組合中央会の宇都宮仁理事は、現在の日本酒市場について「純米吟醸酒の時代」になってきていると説明しました。
市場全体では普通酒の消費が減少する一方で、純米酒や吟醸酒などの特定名称酒の人気が年々高まっています。なかでも純米吟醸酒の存在感は大きく、品質を重視する消費者が増えていることがうかがえます。
一方で、日本酒の楽しみ方も多様化しています。アルコール度数5〜8%程度の低アルコール日本酒やスパークリングタイプが登場する一方、生酛(きもと)や木桶仕込みといった伝統的な製法も改めて注目を集めています。
「新しい日本酒」と「伝統的な日本酒」の両方が評価される今、日本酒の選択肢はこれまで以上に広がっていることを感じました。
日本酒業界が抱える大きな課題は「米」
続いて、最も深刻な課題として、原料米の問題が挙げられました。
令和6年の米不足の影響で一般米価格が高騰し、酒造好適米との価格差が逆転するという異例の状況になっています。
その結果、
- 酒造好適米を作る農家の減少
- 契約栽培の維持が難しくなる蔵元
- 酒蔵自らが農業に取り組むケース
など、日本酒造りを支える環境にも変化が起きているそうです。
海外では日本酒人気が拡大
国内市場とは対照的に、海外輸出は好調。
現在はアメリカ、中国、香港が主要市場ですが、今後は東南アジアや中南米への展開にも期待が寄せられているそうです。
輸出される日本酒は高価格帯の商品が中心で、純米吟醸酒など品質の高い日本酒が世界で評価されていることも紹介されました。
夏にぴったりだった、スパイス料理と日本酒のペアリング

ペアリングセッションでは、日本酒造組合中央会の宇都宮仁理事の解説のもと、日本酒とスパイス料理の相性について実際に体験しました。
会場では、香り高い大吟醸、淡麗辛口、芳醇甘口、生酛系、熟成古酒という5タイプの日本酒と、スパイスバル コザブロによるホタテ・砂肝・ナスの3種のアチャール(スパイス料理)を合わせたペアリングが行われました。
参加者の挙手による投票では、ナスには芳醇甘口タイプ、砂肝には熟成タイプが最も相性が良いという結果に。宇都宮理事は、砂肝と熟成酒の組み合わせについて、カレー粉にも使われるスパイス「フェネグリークシード」と熟成酒にみられる熟成香には共通する香気成分があり、香りが自然に調和しやすいと解説しました。
また、ホタテに含まれるイノシン酸と日本酒に豊富なグルタミン酸が合わさることで旨味の相乗効果が生まれることや、日本酒は燻製のようなスモーキーな香りとも合わせやすいことなど、日本酒ならではのペアリングの考え方も紹介されました。
今回の体験を通して、日本酒は和食だけでなく、スパイス料理をはじめとする世界各国の料理や、ファインダイニングでも取り入れられる機会が増えており、その可能性がさらに広がっていることを実感しました。
まとめ|日本酒はもっと自由に楽しめる時代へ

今回のイベントでは、日本酒市場の現状や課題だけでなく、日本酒の楽しみ方そのものが大きく広がっていることを実感しました。
純米吟醸酒をはじめとする特定名称酒への人気の高まりや海外での評価の向上、そしてスパイス料理のように、これまで意外と思われていた料理とのペアリングなど、日本酒の魅力はますます広がっています。
「日本酒」と一括りにはできないほど、その味わいは実に多彩です。今回提供された「日本酒基本タイプ 飲み比べセット(SAKE 101 Set)」は、日本の酒情報館で試飲できます。全国各地のさまざまなタイプの日本酒を飲み比べながら、自分好みの一杯を探し、日本酒の奥深い世界を楽しんでみてはいかがでしょうか。

