2026年5月11日、青山「星のなる木」にて、ボジョレーワイン委員会(Inter Beaujolais)主催による業界関係者向けテイスティング&ペアリングディナー が開催された。
本イベントは、小売店、レストラン関係者、ソムリエなど、ワイン業界の専門家を対象に、ボジョレーワインの奥深い魅力と多様性をより深く理解してもらうことを目的として企画されたもの。
日本では「ボジョレー・ヌーボー」の印象が強い一方で、実際には赤・白・ロゼを含む計12のAOP を擁し、クリュ・ボジョレーを中心に高品質なワインが数多く生産されている。その真価を“体系的な学び”と“体験”の両面から紹介する貴重な機会となった。
ボジョレーワイン委員会からの挨拶

Olivier Badoureaux 氏
マネージングディレクター Olivier Badoureaux 氏が来日
今回のイベントのために、ボジョレーワイン委員会よりマネージングディレクター Olivier Badoureaux 氏 がフランスから来日。Olivier 氏は、世界市場におけるボジョレーの価値向上を牽引する中心人物であり、冒頭の挨拶では、産地の現状、品質向上への取り組み、そして日本市場への期待を語った。
ボジョレーの未来を支える4つのキーワード
特に、
・クリュ・ボジョレーの地質的多様性
・白ワイン(シャルドネ)の伸びしろ
・若手生産者の台頭
・国際市場での再評価の進展
が強調され、参加者は熱心に耳を傾けていた。
ボジョレーワイン テイスティングセッション

松永 文吾 氏
講師紹介:松永 文吾 氏
秋田県秋田市出身。岩手大学農学部を卒業後、北海道大学大学院農学院を修了。
日本ソムリエ協会が若手育成のために設ける「JSAソムリエ・スカラシップ」受賞者であり、2023年全日本ソムリエコンクール第6位 をはじめ、多数の受賞、入賞歴を持つ実力派ソムリエ。
コンクールで培われた精緻なテイスティング能力と、現場でのサービス経験に裏打ちされた実践的な視点を併せ持つ。豊富な知識と穏やかな人柄、そして日々の研鑽を惜しまない努力家としての姿勢が、多くの業界関係者から厚い信頼を寄せられている。
東京ソムリエギルド ヘッドソムリエ。
東京ソムリエギルド|学び・繋がり・活躍を生み出すワイン業界のプラットフォーム
ボジョレーの現状・統計
AOC:12(ボジョレー/ヴィラージュ+10クリュ)
栽培面積:12,500ha
生産量:6,200万本/年
輸出比率:30%(1,840万本) 日本は輸出国第3位(USA・UKに次ぐ)
クリュの品質向上、白ワインの伸びしろ、若手生産者の活躍など、産地としての進化が数字にも表れている。
地理・地質・栽培のキーポイント
英雄的ブドウ栽培(ヒロイック・ヴィティカルチャー)
※機械化が難しい厳しい自然条件の中で行われるブドウ栽培
・斜度30%以上、標高500m以上
・ボジョレー全体の30%が該当
・収穫はすべて手摘み(機械不可)
・水はけが良く、根が深く伸び、ミネラル表現が強い
主要地質と味わいの傾向
・石灰岩:主にシャルドネ
・ピエール・ブルー:黒果実、スパイス
・片麻岩:スパイス、柔らかさ、エレガンス
・ピンク花崗岩(グラニテ・ローズ):繊細、アロマティック、細やかなタンニン
醸造スタイル:セミ・マセラシオン・カルボニック
・“自然発酵の結果として起こる現象”
・キャンディ香は“狙って作る”もので、伝統的なガメイの本質ではない
・低介入だがナチュラルワインとは異なる
・土地の伝統を尊重し、テロワールを素直に表現する醸造

6種のボジョレーワイン
テイスティングワイン①
Juliénas Les Bucherats 2022(Domaine Chasagne)
ピエール・ブルー中心の痩せた土壌。冷涼感、黒胡椒(ロタンドン)、赤系果実+スパイス。骨格があり小粒で高品質。
テイスティングワイン②
Fleurie 2021 “Selection G. Duboeuf”(Georges Duboeuf)
ピンク花崗岩。フレッシュ、フローラル、バラの香り。赤果実中心で軽やか。
テイスティングワイン③
Moulin-à-Vent 2020(Domaine des Nugues)
同じ花崗岩でもフルーリーと明確に異なる力強さ。果実味豊か、フルボディ、タンニン強い。長熟型。
テイスティングワイン④
Beaujolais Les Pépites Schiste 2022(Vignerons des Pierres Dorées)
南西部の片岩土壌。華やか、バラのニュアンス。ミネラルと直線的な酸が骨格を形成。
テイスティングワイン⑤
A.C. Beaujolais Rosé d’Une Nuit 2023(Château de Corcelles)
ダイレクトプレス。淡いピンク色。プロヴァンス的な軽快さで和食前菜に適性。
テイスティングワイン⑥
Beaujolais Blanc “Terrain Rouge” 2021(Jean-Paul & Charly Thevenet)
石灰質主体。白のポテンシャルを示す一本。産地として白比率10%以上を目指す方針。
ボジョレーワイン ペアリングディナー

ボジョレーワインと和食のマリアージュ
今回はテイスティングセミナーに加え、着席形式の日本料理とのペアリングディナー が実施された。
会場は「星のなる木」総料理長・石井敬道氏による懐石。繊細な味わいと季節感を大切にする日本料理と、多様なボジョレーのスタイルがどのように調和するのか、参加者にとって新たな発見の連続となった。
ペアリングの考え方
松永氏による料理とワインの解説では、「素材そのものではなく、味付けやソースに着目してペアリングを考えることが重要」と語られた。その考え方はペアリングの本質を示すものであり、ガメイやシャルドネが持つ高い柔軟性を改めて実感させる内容だった。

提供ワイン
・Clos de Rochebonne 2023(Château Thivin)
・Beaujolais-Villages Rosé “L’Amuse Bouche” 2023(Domaine Les Roches Bleues)
・Morgon 2022(Julien Sunier)
・Moulin-à-Vent 2022(Château des Jacques)
和食とのペアリングで見えたポイント
① 全体方針
・和食は「四季の流れ」「手数の多さ」が特徴
・特定の一皿を引き立てながらも、他の料理の個性を損なわないことが重要
・100点より「60点以下を作らない」設計
・味付け(ソース)を軸に考える
② 八寸 × シャルドネ/ロゼ
・翡翠豆腐 × シャルドネ:翡翠豆腐の青い風味と湯葉のなめらかなテクスチャーに、シャルドネの樽由来の丸みが調和
・里芋フォアグラ味噌田楽 × シャルドネ/ロゼ:味噌の風味とシャルドネの樽香、フォアグラのコクとロゼ(ガメイ)の野性的な香りがそれぞれ調和
・アオリイカ × ロゼ:アオリイカの旨味と、ロゼ(ガメイ)の持つ野性的なニュアンスが橋渡し役となる
・ちまき寿司 × シャルドネ:酢飯の酸味とシャルドネの樽由来の甘み、ごまの香りが調和
③ 造里 × シャルドネ/ロゼ
・初鰹藁焼き × シャルドネ/ロゼ:藁焼きのスモーキーな香りにはシャルドネの樽香が寄り添い、赤身にはロゼ(ガメイ)が好相性
・アオリイカ × シャルドネ:イカスミ醤油の酸の要素がシャルドネの酸と同調
・赤貝 × シャルドネ/ロゼ:酢味噌の風味とシャルドネの樽由来の甘やかなニュアンス、赤貝の甘みとロゼ(ガメイ)が好相性
④ 焼物(白甘鯛山菜焼き)× モルゴン
モルゴンの野性的なニュアンスや黒系果実、スパイスの風味が甘鯛の身質と調和。行者にんにくの個性的な香りには、ガメイ由来の動物的なニュアンスが寄り添った。
⑤ 強肴:松阪牛サーロイン炙り × ムーラン・ナ・ヴァン
ムーラン・ナ・ヴァンのしっかりとしたタンニンと複雑な風味が、サーロインの脂の甘みを引き立てた。
まとめ

豊かなテロワールを持つワイン産地
ボジョレーの多様性と可能性を再認識する機会に
今回の特別イベントは、ボジョレーが「ヌーボーだけの産地」ではなく、多様なAOPと豊かなテロワールを持つワイン産地であること を再確認する場となった。クリュの品質向上、白ワインの伸びしろ、若手生産者の活躍。ボジョレーは今、確かな進化を遂げている。
そして、日本料理とのペアリングを通じて、ガメイやシャルドネが持つ柔軟性と親和性が示された。和食の繊細さとボジョレーの多様性が響き合う体験は、参加者にとって新たな視点とインスピレーションをもたらしたはずだ。
Inter Beaujolais が掲げる「新たな魅力を発見していただく」 という目的にふさわしい、充実した一夜となった。

