CAコラム|エアラインCAとは全然違う!プライベートジェットCAの舞台裏

Machi

プライベートジェットCA歴9年目!
エアラインCAとプライベートジェットCAの違い、そしてリアルなエピソードをご紹介します。
華やかに見えて意外と知られていない、プライベートジェットの世界を覗いてみませんか?

目次

プライベートジェットのイメージと現実

皆さんはプライベートジェットに対してどのようなイメージをお持ちでしょうか?
有名人やセレブリティの方たちの移動手段、富豪の方の道楽、某自動車メーカー社長の逃亡手段…など人によって様々に想像できるかもしれません。

イメージ同様に使用されることもありますが、実はチャーターをすることもできるため、お金を出せばどんな方でも乗ることができます。とはいえ、あまりお話を聞く機会もないと思いますので、私たちの仕事について少しお話させていただきます。

プライベートジェットCA vs. エアラインCAの仕事の違い

エアラインのCAとプライベートジェットのCAとの仕事の違いはかなりありますが、プライベートジェットのCAは、多岐にわたるコーディネートをすることが最も大きな違いだと思います。

私は、あるジェットの専属で働いており、ありがたいことに、ジェット購入時から携われるかなり特別なCAだと思っています。まず、飛行機購入前のミーティングから参加させていただいたり、購入後、引き渡し前に立ち会い、テストフライトに同乗し、不具合などがないかを機長共々チェックし、異常がないことを確認したりします。その上で機内準備に取り掛かります。

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機内準備のスケールが違う!爪楊枝1本からすべて用意します。

引き渡し後(納機後)の機内は、ほぼ何も物がないため、フライトに必要とされるもの全てを自分で用意し搭載しなければなりません。それは、爪楊枝1本から寝具まで!アイテム数でいうと200を超えるかもしれません。数字にすると膨大ですが、自分が使用するものを好きなように選べるわけですから、これらの準備は毎回とても楽しんで行っています。

エアラインのCAは、乗務する便が決まったら、当日までにお客さまの情報を得て、当日は搭載されたお食事やワインを数えたり、搭載されたアメニティをセットしたりとCA以外の方が事前に準備してくださったものを提供しますが、プライベートジェットのCAは、乗務が決まると、お食事はもちろん、ワイン、アメニティまで全てを自分で準備します。旅程が長い、もしくは旅客数が多ければその分に必要なもの全てを事前に手配する必要があります。ちなみにパイロットのお食事やお飲み物の準備ももちろんCAの仕事の一つです。

世界を飛び回るプライベートジェットCAの奮闘

私の場合、日本人の旅客には長期の旅程の最終日に和食を提供したいという想いが強くある為、できる限りの下準備をするのですが、特に、ヨーロッパですとあまりきちんとした日本食に出会えないため、日本から食材を持参することの方が多くあります。

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ケータリングがない地域では、自ら食材を買い調理します。

飛ぶ場所によっては、ケータリング会社自体がなく、出来上がったお食事を提供することが不可能なため、自ら食材を購入し、機内で作って提供することもあります。どんな環境でお料理するのかが気になりますよね? 機内の設備はエアラインが使用するものとあまり変わらないため、電子レンジ、オーブン、ポットでできるものがメインです。エアラインと大きく違う点は、包丁などのナイフ類の搭載が許されているため、お野菜やお肉などを切ることが可能なことです。ですので、余裕があれば、飾り切りをすることもありますし、お肉の塊をオーブンで焼いて、切って提供したりもします。

和食をアマゾンで?予想外のトラブルと対応力

今までで一番大変だったのは、マナウス(ブラジル アマゾン川河口付近)発、サンパウロ行きの便で、お食事の提供をしてほしいとのリクエストがそのフライトの2日前にあり、和食が食べたいといわれた時のこと…それまでも既に1週間ほどフライトをしていたので、事前準備もできませんでした。

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CAの対応力が試される瞬間
アマゾンで和食を作る!?食材探しから調理までの奮闘
包丁OKの機内キッチン!制限のある空間で生み出す絶品機内食

日本や東南アジアならまだしも、アマゾンの真ん中のマナウスでは和食材に限らず、食材自体の調達が見込めないと判断し、直前の寄港地アトランタで食材調達に行き、スーパーマーケット内を歩き回り、翌日提供できる和食のメニューを考え、「豚肉の生姜焼き」に決定しました!14名分の豚肉、タマネギ、キャベツ、生姜をはじめ、付け合わせに必要な食材を買い占めて、いざ機内へ。その量は大きな紙袋8個分と、腕がちぎれそうなほど!

豚肉は、スーパーマーケットでスライスしてもらえなかったので、マナウスへの飛行中、包丁で薄く切るところからスタートし、合わせ調味料にお肉とタマネギを漬け込み、準備をしました。

マナウス発当日は、漬け込んだお肉をオーブンで焼き上げ、千切りキャベツ、くし切りトマト、ポテトサラダなど、お皿に盛り付けし、機内の電子レンジでお米を炊いて、フリーズドライのお味噌汁と機内で作った香の物も併せて提供しました。幸いこのフライトでは、酒類の提供がなかったため、リフィルの嵐からは救われましたが、満席時は14名さまを相手に、オーダーも、ギャレイでの温めや盛り付け、提供も、お飲み物のリフィルも回収も全て1人で行うため、イメージトレーニングとタイムキープが必要です。

通常は、お食事が決まった時点で、それに合わせたワインや日本酒、焼酎も調達します。ペアリングを考えるのは何よりも好きで、それを楽しみにしている方々が居るのは嬉しいことです。

フライト後の後片付けまでがCAの仕事

お食事提供後は、エアラインのCAは、カートに使用済みの食器類を収納すればよいのですが、プライベートジェットでは、後片付けもCAの仕事ですので、食器類を回収し、ギャレイで洗浄、拭き上げし、元の場所に収納します。また、トーションやナプキン、シーツ、枕カバーなどのリネン類は到着した空港でクリーニングをお願いするかホテル、もしくは日本まで持ち帰り、次フライトまでにお洗濯をします。お掃除に関しても、清掃の方がいるわけではないので、毎フライト後に、客室、お化粧室の清掃、ゴミ捨てを全てCAが行います。

華やかさの裏にあるリアルな仕事量

プライベートジェットのCAと聞くと聞こえが良いかもしれませんが、エアラインのCAと同じ「客室乗務員」とは言えないくらいの仕事量があるのが現状です。この仕事に就いて9年目を迎えましたので、皆さんには想像つかないような失敗談や体験談もありますが、今回はエアラインのCAとプライベートジェットのCAとの大まかな違いについてお話させていただきました。

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また機会に恵まれましたら、内情をお話できたらと思っております。

この記事を書いた人


世界を飛び回りながら、大好きなワインの仕事を傍らに、大手商社などのワインコラムを10年間執筆。ワイン講師やマナー講師、イベント主催、飲食店のサービストレーニング及びコンサルティングも行う。

元日本航空 客室乗務員
大手メーカー 客室乗務員
グローバルワインエデュケーション認定講師

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