CAとしてJSA、WSET、ASIの上位資格への挑戦《JAL現役CA×ワイン》宮崎まりさん連載コラム 第4回

【Wine Flight編集部より】

このたびWine Flightでは、日本航空の現役客室乗務員であり、ワインの国際的な難関資格「WSET Level 4 Diploma」および「国際ソムリエ協会A.S.I Diploma Gold」を保持する宮崎まりさんによる特別連載を、全5回シリーズでお届けいたします。

客室乗務員としてのキャリアと、ワイン資格取得の両立。そのリアルな体験を通じて、「好きを形にする働き方」や「学びを通して広がる可能性」に触れていただけるはずです。
ぜひ、シリーズを通してご覧ください。

格納庫のJAL機 Boeing 787-9
目次

CAとしてJSA、WSET、ASIの上位資格への挑戦

航空会社の客室乗務員(CA)として勤務しながら、私はワインに関する資格を追求してきました。特に、JSA(日本ソムリエ協会)、WSET(Wine & Spirit Education Trust)、そしてASI(国際ソムリエ協会)の上位資格への挑戦は、私にとって非常に重要な目標でした。これらの資格は、単なる知識や技術の証明にとどまらず、私のキャリアを大きく発展させるための礎となりました。

JSAソムリエ、ソムリエ・エクセレンス取得の決意

私が最初に挑戦した資格は、日本ソムリエ協会(JSA)のソムリエ資格でした。航空業界でのキャリアを築きながらも、ワインに対する興味が高まり、資格を取得することでその知識を深めたいと思うようになりました。ソムリエ資格の取得は、ワインの基礎知識やサービス技術を深めるための第一歩でした。しかし、当時はソムリエ資格を取得しただけで満足してしまいました。試験には合格したものの、資格を持っているだけ、という後ろめたい気持ちや自信のなさから、サービスに活かしきれてはいませんでした。

その後、「CAはワインスクールに遊びに来ているだけ」「ソムリエ取っただけで終わり」といったインターネットの心無い書き込みを目にし、客室乗務員でも上位資格を取得し実績を残せることを証明したいと思い、ソムリエの上位資格であるソムリエ・エクセレンスの受験を決意しました。しかし当初、ソムリエ・エクセレンス試験に挑戦した際、私はレストラン勤務の経験がないことを理由に、サービス実技に苦手意識を持っていました。実際、試験でも納得のいくパフォーマンスができず、制限時間内にも終わらず、「私はレストラン勤務でないから仕方がない」と自分に言い訳をしていました。案の定、私は不合格でしたが、合格者の中に、酒販店にお勤めの方がいらっしゃることを知り、「環境を言い訳にしていた自分が恥ずかしい」と深く反省しました。この経験が、以後の学びの姿勢や努力の方向性を見直す大きな転機となりました。

以後、ソムリエ・エクセレンス資格を取得できたことで、ワインに対する知識と理解が深まり、機内サービスにも自信を持って臨めるようになったことは大きな成果でした。

シャンパーニュ「サロン」を機上で味わえるのは
JALファーストクラスのお客さまだけ

WSET Diplomaへの挑戦

次に挑戦したのは、WSETのDiploma資格です。WSETは、ワインとスピリッツに関する国際的に権威のある資格認定機関であり、そのDiploma資格は世界的にも非常に高い評価を受けています。この資格に挑戦した背景には、単にワインサービスの技術を深めることだけではなく、国際的に通用する知識を身につけることで、自分のキャリアをさらに広げたいという思いがありました。

WSET Diplomaの学習は、非常に厳しいものでした。試験は6科目に及び、言語は英語で、内容は広範にわたり、ワイン産地やブドウ品種の知識はもちろん、ワインビジネスや法規制、マーケティング戦略に至るまで、多岐にわたるトピックを網羅しています。特に、ワインの感覚的な評価だけでなく、ワイン産業全体を理解することが求められます。そのため、日々の学習が非常に負担となり、フライトと勉強の両立にはかなりの努力を必要としました。

それでも、私はワインの知識を深めることに喜びを感じ、試験に向けて勉強を続けました。最終的に1年11か月をかけてWSET Diploma試験に合格し、国際的な認知を得ることができました。この資格は、私のキャリアにとって大きな財産となり、ワインに対する深い知識と理解を得るための強力な武器となりました。

ロンドン・ギルドホールにて
WSET Diploma修了証を受け取る宮崎まりさん

ASI Diplomaの挑戦

そして、次に挑戦したのは、ASI(国際ソムリエ協会)のDiploma資格です。ASIは、世界中のソムリエが所属する国際的な団体であり、成績による認定がGold、Silver、Bronzeと三段階ある中で、Goldは、ソムリエとしての最上級資格とされています。この資格は、単にワインの知識を深めるだけでなく、ソムリエとしての技術やサービスの質をさらに高めるための非常に重要な試験でした。

ASI Gold Diplomaの試験は非常に厳格で、知識だけでなく、実際のサービス技術やワインに関する総合的な理解が問われます。特に、試験では筆記、論述、サービス実技に加えて、ワインのテイスティングも重要なポイントとなります。私は、これらの実技をしっかりと身につけるために、練習を重ねました。

昨年のASI試験では、私は足を骨折しており、サービス実技を最後までやりきることができませんでした。不本意ながらBronzeでの合格となり、「来年はGoldを取るために受け直す」と周囲に宣言しました。そして、この4月に有言実行を果たし、Gold合格を達成できました。このことは、自分にとって大きな達成感につながるとともに、自分のキャリアにおいて新たな高みを目指すことができました

なお現在日本では、WSET DiplomaとASI Goldの双方の所持者は、わずか4名です。

ASI MAGAZINEで特集された宮崎まりさん
18ページから全5ページにわたって紹介

上位資格への挑戦を通じて得たもの

これらの資格を取得することは、私にとって単なる学びの過程ではなく、ワインに対する深い愛情と情熱を証明する挑戦の連続でした。いずれの資格試験も非常に厳しく、時には挫折しそうになることもありましたが、その壁を乗り越えることで確かな自信と実力が身につきました。

 さらに、上位資格を取得する過程で、私は多くのワイン業界のプロフェッショナルと出会い、彼らから貴重な学びを得ることができました。これらの経験は、私にとって非常に貴重な財産であり、同じ目標を持つ仲間たちとの交流も、モチベーションを高める源となりました。今では、これらの資格が私のキャリアを支える大きな強みとなり、ワインに関する深い知識を通じて、機内サービスにも自信を持って取り組んでいます。

Master SommelierのChristopher Bates氏
と宮崎まりさん
Master SommelierのPierre-Marie Pattieu氏
と宮崎まりさん

まとめ

客室乗務員としての仕事を続けながら、JSA、WSET、ASIといった世界的に権威のある資格を取得することは、決して簡単なことではありませんでした。しかし、その挑戦を通じて得た知識や経験は、私のキャリアを大きく広げるとともに、ワインへの深い理解に基づいた質の高いサービスの提供へとつながっています。

これからも、ワインに対する情熱を持ち続け、さらなる高みを目指して学び続けたいと思います。そして、これらの資格を活かして、ワインの楽しさや魅力をお客さまに伝えていけるよう、これからも努力を続けてまいります。

【次回予告】
第5回:「フライトの合間にワイン資格を取る方法、忙しくても学び続けられた理由」
7月25日公開予定

この記事を書いた人

日本航空株式会社 客室乗務員
WSET Level 4 Diploma
A.S.I. Diploma Gold
JSAソムリエ・エクセレンス
ドイツワイン上級ケナー
日本ワイン検定1級(日本ワインマスター)
Sake Diploma & International

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